映画『ボーイ・ソプラノ ただひとつの歌声』プロダクションノート

映画『ボーイ・ソプラノ ただひとつの歌声』

賞賛を受ける監督フランソワ・ジラール(『レッド・バイオリン』(98))が贈る『ボーイ・ソプラノ ただひとつの歌声』は、厳しい教師に挑みながら、夢を実現しようとする、天賦の才能をもつ反抗的な少年の成長を描く感動作である。

映画『ボーイ・ソプラノ ただひとつの歌声』

珠玉のアンサンブルキャストには、2度の米アカデミー賞®に輝くダスティン・ホフマン、同じく米アカデミー賞®受賞者キャシー・ベイツ、2度のエミー賞に輝くエディ・イザード、米アカデミー賞®に3度ノミネート経験をもつデブラ・ウィンガー、そしてジョシュ・ルーカス(『ビューティフル・マインド』(01))、ケヴィン・マクヘイル(TVシリーズ「Glee」(09~15))が参加し、少年合唱団の中で競い合う少年シンガーたちを演じる新人俳優たちを率いて見事な演技を披露している。

心躍る音楽に満ち溢れた本作は、生活に追われるシングルマザーのもと、人生に諦めているステット(新人ギャレット・ウェアリング)の物語から始まる。学校の校長(ウィンガー)は、ステットの天使のような歌声は何ものにも勝るほどの価値があると確信しているが、ステット本人は自分の人生にのしかかる暗い現実を歌声が助けてくれるなんて思ってもいない。だが、突然の事故で母を亡くし、東海岸にある米国一のエリート少年合唱団を有する私立校に入学することになったことで、ステットの運命が180度転換する。しかし、ステットにとって唯一の希望になるはずの学校に、彼は馴染めない。音楽を勉強したこともないし、自分を支えてくれる人もおらず、それに彼の心はどうにも表現しようのない、煮えくり返るような怒りに満ちていたからだ。さらに悪いことに、学校に入ってすぐに、ステットはこれまで出会った中で一番厳しく、頑固で容赦ない人間と出くわしてしまう。数々の賞賛を受けてきたベテラン教師で今なお衰え知らずの頑固な指揮者カーヴェル(ホフマン)である。

映画『ボーイ・ソプラノ ただひとつの歌声』

やがて、ステットの不屈の精神が驚くべきサウンドを生み出し、ステットは歌うごとに歌への情熱を膨らませていく。そしてその情熱は、ステット自身の人生だけでなく、彼の周りにいる大人たちにも影響を及ぼしていく。カーヴェル自身も、彼の同僚で鼻持ちならないドレイク(イザード)も、堅実な学校長(ベイツ)も、ステットのために闘ってくれる若い教師(マクヘイル)も、正妻や子供たちにステットの存在をひた隠しに隠そうとする疎遠な父親(ルーカス)も、ステットに熾烈なライバル意識を燃やす合唱団のスターシンガー(新人ジョー・ウエスト)も……。だが、少年の歌声が永遠に続くことも思春期を生き残ることもない。変化は必ず、そして突然訪れる。それに耐えることも一つのレッスンであり、ステットは、たったひとときに自分の才能を最大限に生かす大切さを学んでいくのだった。

映画『ボーイ・ソプラノ ただひとつの歌声』

本作で歌われる優美な合唱曲には、作曲家ブライアン・バーン(『アルバート氏の人生』(11))によるオリジナル音楽、そしてグラミー賞ノミネート経験をもちプラチナアルバムを何枚も出すレコーディングアーティストのジョシュ・グローバンが歌うテーマ曲「The Mystery of Your Gift」、そして見事なアメリカ少年合唱団の歌声が織り交ぜられている。

アカデミー賞受賞者×新星の登場

アカデミー賞受賞者×新星の登場

この映画はめったに見ることのできない世界を描いている。厳しい音楽への情熱や失われた夢を表現する大人の役に、映画界の重鎮の俳優たちが引き付けられた。ジラール監督は彼らの感情ほとばしる反応と、インディ系の映画にもかかわらず俳優達が示してくれた献身的な姿に感謝した。

映画『ボーイ・ソプラノ ただひとつの歌声』

「ベンの脚本にある全てのキャラクターに感動した。ダスティン・ホフマン、キャシー・ベイツ、エディ・イザード、デブラ・ウィンガー、ケヴィン・マクヘイル、ジョシュ・ルーカスといった俳優たちが、才能と努力を通してキャラクターに息を吹き込み、新しい方向へと発展していく姿を目撃するチャンスに浴した」とジラール監督は言う。「僕はこのキャストに本当に感謝しているんだ」 多くの賞賛を積み重ねてきたスター俳優たちが勢揃いするキャストが、本作の基盤ではあるが、少年合唱団を構成する若手俳優たちを見つけることも大切な要素だった。ステット役と、彼の主な仲間やライバルの役を演じる俳優を見つけるため、キャスティング・ディレクターのジョン・パプシデラを先頭に、製作陣は世界中を探し回った。そして、ステット役の捜索はロサンゼルスで終了した。製作陣は、テキサス州カレッジステーション出身の若手俳優で12歳のギャレット・ウェアリングを発見したからだ。

映画『ボーイ・ソプラノ ただひとつの歌声』

「12歳の子供を配役するのはいつだって恐い」とジラール監督は認める。「以前仕事をしたことがある子はほとんどいない。オーディション以外に確たるものがないんだ。しかもオーディションは惑わされることが多いから、僕は好きじゃない。でもギャレットにはステット役に必要な素晴らしい演技力があることがすぐにわかった。彼の年頃ではめずらしく、集中力がある。彼の強烈さと鍛錬に感心した。俳優としての彼にとってこの映画は、エキサイティングな旅の始まりになると思う」

製作が進行する中、ジラール監督は、カーヴェルを矛盾に満ちた立体的な人間にするため、ホフマンとともに緊密な作業を始めた。米アカデミー賞®を2度受賞し7回のノミネート経験をもつこの映画界の伝説は、演じるキャラクターに無防備なもろさを表現することで知られている。カーヴェルは生徒たちに対し強気で取り組む団長で、ステットが脚光を浴びることに対してあまり良い気持ちを抱いていない。

「ダスティンとは脚本から取り掛かった」とジラール監督は言う。「撮影前にお茶を飲みながら作業し、話し合って多くの時間を過ごした。彼は素晴らしく気の合う仲間だし、とても協力的で、献身的だった。彼はちょうど監督として自分で映画を撮り終えたところだったから、この役が経験する困難にかなり感情移入していたのかもしれない!」

映画『ボーイ・ソプラノ ただひとつの歌声』

映画『ボーイ・ソプラノ ただひとつの歌声』

二人はまた、このキャラクターを多くの面に分解し始めた。「ダスティンは最初なぜ自分がこの役を演じるべきか、問い掛けていたよ」とジラール監督は言う。「カーヴェルはかなり辛らつなキャラクターとして登場し、ステットに厳しく接する。観客の反感を買うタイプだ。でもダスティンが演じると、必ず強さの中にも愛すべき性質が出るだろうと僕は確信していた。人は常に、ダスティンの心根の温かさを感じる。それがこういったキャラクターに大きな違いを作り出すんだ。彼にはそういう魂のこもったところがあり、それが彼の存在感の一部になっているんだ」

さらに、ホフマンと作業しながら、ジラール監督はこの物語に新しい方向性を見始めた。恵まれない生徒にチャンスを与えることになる石頭の教師という単純な物語以上に、一人の少年が自分の恩師に、取り返しがつかなくなる前に人生とひらめきをもう一度取り戻すきっかけを与える物語でもあるのだ。

「この少年が教師に言う『じいさん、あんたの時間は残り少ないんだよ』という言葉は、ダスティンと僕の作業の最後のほうに生まれたセリフだ」とジラール監督は説明する。「ダスティンと僕は、ステットがカーヴェルに与える裏返しの影響にもっと興味をもち始めた。この教師が生徒に教えているのは明らかだが、教師も生徒から教えられていく。そこが面白い。物語の終りにはカーヴェルの中で何かが変化しているんだ」

鳥肌ものの合唱曲の数々

鳥肌ものの合唱曲の数々

合唱曲がベースとなった学校という非常にユニークな世界観を捉えるため、本作の製作陣はニュージャージー州プリンストンにあるアメリカ少年合唱スクール(ABS)と緊密に作業した。この学校は、70年以上続く非営利の全寮制の音楽学校で、4年生から8年生の少年たちに厳しい学業と優れた合唱曲を訓練するプログラムを組み合わせている。さらに、この学校は、米国内外でツアーをおこない高い評価を得ている。

ジラール監督と製作チームは、ABSを参考にして本作の全寮制の学校と合唱団を形作った。そして、ABSのメンバーに、映画の合唱団の顔となる人物を演じるロサンゼルスとニューヨークの若いキャストを後ろから支える背景の少年たちとして、映画に参加してほしいと依頼した。現在と過去のアメリカ少年合唱団のレパートリーからレコーディングした曲は、許可を受け、本作のサウンドトラックに使用された。ABSの音楽監督フェルナンド・マルヴァー=ルイスが、ジラール監督に協力し、現代の音楽学校を描く真実味のある表現に、重要な役割を果たしてもいる。

映画『ボーイ・ソプラノ ただひとつの歌声』

映画『ボーイ・ソプラノ ただひとつの歌声』

本作はニュージャージー州プリンストンにある学校から非常に貴重な情報と資源を活用させてもらったが、撮影はコネチカット州でおこなわれた。撮影監督のデヴィッド・フランコ(TVシリーズ「ゲーム・オブ・スローンズ」(14、15))と美術のジェーン・マスキー(『シーズ・ファニー・ザット・ウェイ』(14・未))がコネチカットにあるいくつかの学校のキャンパスに、ステットが圧倒されるほどの環境を作り出した。 音楽的才能が溢れる本作において、オリジナルエンドタイトルを、世界最高のポップスターの一人となったクラシック音楽界のボーカリスト、ジョシュ・グローバンが歌っている。この曲は、本作の音楽を担当する作曲家で、『アルバート氏の人生』(11)の魅惑の音楽でゴールデングローブ賞にノミネートされたブライアン・バーンと、グローバン自身が共作している。だが、それ以外は全て合唱曲である。偉大な作曲家の面々がこのジャンルに大きな足跡を残し、極みの音楽美に到達するジャンルだと考えられてきた。そのサウンドは時折、中世や近代教会音楽に結び付けられるが、最近、合唱曲は素晴らしい復活を遂げ、リアリティ番組のテーマなどにも使われている。

映画『ボーイ・ソプラノ ただひとつの歌声』

ジラール監督は生の人間の声は常にどこか並外れたものがあると言う。「人々はヨーヨー・マやジョシュア・ベルのような器楽家を愛してやまない。それは彼らの演奏に人間の声が聞こえるからだ」と監督は言う。「僕がオペラを演出して、最も楽しいリハーサルは、コーラスが出てきて、ハーモニーを奏で始めた時だ。涙がでるほど感動する。そこにはものすごい感情のパワーがあるんだ」

少年合唱団のサウンドがそのコンセプトを極みのレベルまでもっていく。「音楽を選んでいる間、多くのリサーチと楽曲を聴いた。そして、純粋なものが人の心に特別な感動を呼び覚ますことに気づいた。聴く時間を短くしないと、感情と郷愁が溢れてきて、自分を抑えられなくなったほどだ。偉大なる作曲家たちの感動の楽曲と純粋無垢な子供たちの声が交わる瞬間。ほかにそれほどの感動があるだろうか」とジラール監督は言う。「それがこの映画の原動力だった。純粋な声が人の心を大きく解き放ってくれるんだ」